支部会報に寄稿しました
関東信越税理士会浦和支部の会報に掲載されましたので、その記事を掲載します。
会計事務所の仕事と数学12班 松波竜太 会社の会計・財務データを分析することが好きだったので、会計事務所に入りました。運動オンチでもないのですが、アグレッシブに体を動かすことも好きではないので、休みの日はもっぱら数学や統計学の本を読んですごしています。 仕事の中で、相関関係と因果関係について疑問に思うことがあります。とは申しましても、独学で勝手に解釈していることなので、間違いがあるかがしれませんが、その点ご容赦頂ければと思います。 ご存知のことで大変恐縮ですが、相関関係というのは、Xの値が大きくなるとYの値が大きく(または小さく)なるという関係です。この場合、XとYの関係は逆転してもかまいません。これに対して、因果関係というのは、原因Xの結果Yが生じる、というような関係で、XとYが逆になることはありません。 さて、それでは、「帳簿付けがしっかりしている会社は利益が出る」というような表現が使われますが、どうでしょうか?
←利益
| A | 利益 ○ 帳簿 × | B | 利益 ○ 帳簿 ○ |
| C | 利益 × 帳簿 × | D | 利益 × 帳簿 ○ | |
| 帳簿→ | ||||
実際の企業の中には、Aのように帳簿付けはできないが利益が出ている、または、Dのように帳簿付けはできるが利益は出ていない、という会社もあると思います。しかし、上の言葉は、BとCの関係だけをピックアップし、帳簿付けと利益に相関関係も因果関係があるかのような表現になってしまっています。経験的にそういうこともあるかもしれませんが、実際に統計を取って散布図を作成してみたら、意外と両者は無相関かもしれません。
もう一点は、「黒字企業をベンチマークにして利益計画を作成し、企業実態をそれに合わせると利益体質の企業になる」これはどうでしょうか?
←財務評価
| A | 評価 ○ 利益 × | B | 評価 ○ 利益 ○ |
| C | 評価 × 利益 × | D | 評価 × 利益 ○ | |
| 利益→ | ||||
財務分析の結果は大抵の場合、「少ない資産で大きな利益を出す」と良くなりますから、AとDは通常無いと思います。したがって、利益と評価には相関関係があります。かつ、利益が出ると評価は高くなるという因果関係も認められます。
しかし、利益が出ているから評価が良くなるということの反対、つまり、「評価が良くなるように利益計画を立てると利益がでる」はどうでしょうか? X⇒Y が成り立っても、 Y⇒X が成り立つとは限りません。したがって、黒字企業の財務分析結果を参考にして予算を立てると利益につながる、ということまでは言えないのではないでしょうか。
私たちの周りには、このように相関関係と因果関係が、また、因果関係の原因と結果がいつの間にかすり替えられてしまっていることが多いように思います。
企業の利益と相関関係にある要素をピックアップして、そこに因果関係があるかどうか、経営者と一緒に丁寧に検証していく。このような地道な作業は中小企業に深く係わっている税理士だから可能なことなのではないかというのが、まだまだ経験も少なく未熟ですが、これが仕事を通しての今のところの私の感想です。
