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2006年09月11日

生命保険を利用すべきか再投資すべきか

生命保険を利用して、退職金の準備をするという説明をちょっと前にしました。

生命保険は契約年齢と満期の関係によって契約期間前半に相当程度の貯蓄部分すなわち解約返戻金が発生します。

解約返戻金の支払保険料累計に対する比率を「解約返礼率」といいます。

解約返礼率は保険の種類ごとに異なります。

解約返礼率は貯蓄性の高い商品は高く、貯蓄性の低い商品は低くなり、高いものでは130%にも上ります(保険料支払累計額の130%相当が返ってくるということ)。

 

また、税務的に見ると、返礼率の高い商品は損金算入率が低く(経費として認められる割合が低い)、返礼率の低い商品は損金参入率がが高い((経費として認められる割合が高い)という特徴があります。

保険会社の売りは「経費として認められるので節税になります」ということになります(実際には満期の保険金に税金が課されるので、税金の繰延にはなりますが、本来的な「節税」とはニュアンス的に違っているのかと思います(注1))。

しかし大切なのは、経費になる部分はありますが、いずれにしても資金が社外に流出するという点を考慮しなければならないということです。

生命保険には保険料を支払うことにより、将来の退職金等を先取りして経費にするという効果がありますが経費になる額より資金流出額多い場合がほとんどです。

たとえば、支払額の1/2が損金に認めれらる保険料を75万円支払っても、経費として認められるのは37.5万円ということになります。

 

今回は、保険料を支払わないで「税金を払ってでも」再投資にまわして運用するのが得か、それとも保険料を支払ったほうが得かの分岐点について考えてみたいと思います。 

まず、保険料支払前の利益が毎期x円の企業が残った利益を翌年に再投資してy%の利益がえれられる場合に、n期に得られる利益(=キャッシュ)の累計は

Σ{x(1-t)(1+ty)^(n-1)}
(tは税率)

となります。

これと、保険料として余剰キャッシュを全額支払った場合のn期のキャッシュとを比較して、前者が上回れば保険よりも再投資、後者が上回れば再投資よりも保険ということになります。

式で書いても、難しいので実際の例を見てみましょう。

下の表は、保険料支払前利益100で、再投資利益率15.1%・解約返礼率130%の場合の保険契約 有・無 を10年満期で保険利益は全額役員の退職金として処理する、と仮定した表になります。

保険契約 無

 

 1

 2

 3

・・・ 

 10

保険料支払前利益 

100 

100 

100 

 

100 

100 

100 

増加キャッシュの
再投資による利益 

 0

 9

 19

 

 83

 100

 118

税引前利益 

 100

 109

 119

 

 183

 200

 218

法人税率(40%) 

 40

 43

 47

 

 73

 80

 87

税引後利益 

 60

 66

 72

 

 110

 120

 131

増加キャッシュ 

 60

 66

 72

 

 110

 120

 131

累積増加キャッシュ 

 60

 126

 198

 

 665

 785

 916

保険契約 有

 

 1

 2

 3

・・・ 

 10

保険料支払前利益 

100 

100 

100 

 

100 

100 

100 

増加キャッシュの
再投資による利益 

 0

 0

 0

 

 0

 0

 0

保険料(1/2損金) 

 37

 37

 37

 

 37

 37

 37

保険料支払後利益 

 63

 63

 63

 

 63

 63

 63

受取保険利益       

 595

退職金       

 595

税引前利益 

 63

 63

 63

 

 63

 63

 638

法人税率(40%) 

 25

 25

 25

 

 25

 25

 25

税引後利益 

 38

 38

 38

 

 38

 38

 38

税引後退職金を
会社で借受け 
      

 536

保険積立金 

 38

 38

 38

 

 38

 38

 -342

増加キャッシュ 

 0

 0

 0

 

 0

 0

 0

累積増加キャッシュ 

 0

 0

 0

 

 0

 0

 916

有利不利に影響する要素は

再投資利益率
解約返礼率
退職所得の所得税率

の3点です。

保険契約は契約時に上記の全てが計算できますので、契約前にかならず損得計算をしてください!

上記の表では、最終期である第10期目の累積増加キャッシュが両者とも916となっています。つまり、この状態が分岐点ということになります。

つまり、解約返礼率が130%退職所得の税率が10%の場合には、事業から生まれる再投資の利益が15.1%以上あれば、保険契約よりも自分で貯めたほうが得ということになります。

 

解約返戻金と退職所得税率を変えて6パターンのシミュレーションをしてみましたので、実際に近いものを参考にしていただければと思います。

解約返礼率 

130 

130 

120 

120 

110 

110 

退職所得税率 

10 

20 

10 

20 

10 

20 

損益分岐点再投資利益率 

15.1 

12.8 

12.4 

10.2 

9.6 

7.4 

 

再投資利益率って何?というと、

たとえば、上の表で言うと増加したキャッシュ60を運転資金にあてて9ずつ粗利が増えるような取引を始めるよう場合を言います。

 

当然ですが、解約返礼率110以下の商品では、損益分岐点再投資利益率はもっと低くなります。

いかがでしょうか? 節税だけが脳じゃないってことです。景気の良くなりつつある今だからこそ、この傾向は強くなってきています。

 

ちなみに、上の計算は「同族会社の役員が退職金を受取る」ということを前提にしておりますから、「従業員に支払って手許に現金が残らない」というケースもあります。

この場合には、退職所得に転換する節税効果が全くなくなるので、損益分岐点再投資利益率はもっと低くなります。

解約返礼率 

130 

120 

110 

損益分岐点再投資利益率 

7.4 

5.2 

2.8 

 

いずれにしても、運用と会社の運用どちらが上手かによるという訳です。保険会社には負けていられませんよね~!!

シミュレーションしたエクセルのシートをアップロードしておきますので、検討される際の参考にしてください(ただし、質問は受け付けません。かつ、結果については自己責任でお願いします)。 ⇒保険再投資検討エクセル

 

(注1) 現行法では、最終的に受取った保険金を退職金として支払うことにより法人税を所得税に転換し、退職所得とすることにより税率が格段に低くなります。同族会社であれば、法人資産であれ個人資産であれ、資産は資産なので、結果的には節税ということになります。しかし、退職所得に係る税に関しては、以前から見直しの議論が上っており、将来的にこの制度が維持される可能性はとても低いと私は思います。

(注2)  満期10年で解約返礼率100~130%という商品が存在するかは定かではありません(恐らくないと思います)。

[関連記事]

 

理にかなった生命保険(法人編1・借入金返済編)
理にかなった生命保険(法人編2・仕入債務編) 
退職金の準備 
生命保険を利用べきか再投資すべきか 
理にかなった生命保険とは(個人編)

投稿者 松波 竜太 on 2006年09月11日 06:14

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