普通の役員報酬っていくら?
会社から役員報酬を多くとってしまうと会社に利益が残らなくなってしまい、法人税が小さくなってしまうので、法人税法上、役員報酬について、その人の働き具合や、会社規模、同業者比較等を勘案して不相当に高額な金額は経費として認めない。という規定になっています。
このブログでも、役員報酬シミュレーションの際にも「役員報酬は計算上非常に高額となります。税務上問題になる場合があるので御注意ください(税額最小役員報酬の目安)」と、注書きをさせていただきましたが、役員報酬を議論するうえで不相当に高額な金額というのは切っても切れない問題です。
そこで、問題となるのがいくらからが不相当な金額なのかということです。
その人の働き具合と報酬の多寡は感覚的なものも含まれますので、ここでは考慮しないものとします。
今回は周りはいくらもらっていて、自分の給料は高い方から何パーセントぐらいに入るのかということを社長の役員報酬で考えてみたいと思います。
TKC賃金BAST(平成17年)という資料の、社長の役員報酬105,138件全データの役員報酬をヒストグラムにしてみました。
平均 83.1万円(中位60万円) 標準偏差60.7万円です。
この金額高いと思いますか?低いと思いますか?
私は実感よりも低いと思いました。ある程度の売上規模の会社の社長は皆さん100万円くらいは取っていますよね?
明らかに右下がりのグラフで、このグラフだけ見ると役員報酬の額が高くなればなるほど、税務リスクが高くなるように思えます。
一瞬ギョッとしましたが、データを売上規模別に分解してみたところ理由が分かりました。
資料:TKC賃金BAST(平成17年版)
傾向としては売上規模が大きくなるほど、グラフが正規分布に近づきます。正直言って、売上規模2.5億円未満の場合は、正規分布とは言いがたい形状ですので、上記表の確率はあてにならないと思います。しかし、元になったデータにおいて、役員報酬20万円未満の掲載がなかったので、仮に20万円未満の数値があるとした場合には、正規分布になるのではということも考えられなくはないと思います。
傾向としては売上規模が大きくなるほど、平均と標準偏差が大きくなるということです。標準偏差が大きくなるということは、ヒストグラムが横に広がるということです。
表は、例えば売上規模15億円の企業の社長給与を考えた場合に、平均が147万円で、237.5万円もらっている人は20%しかいません。323.8万円もらっている人は5%としかいません。という風に見ます。
つまり、パーセントが高くなるほどもらっている人の数は少なくなる⇒珍しい金額⇒普通ではない
ということが言えます。
表の90%の金額だと80%の確率で、95%の金額だと90%の確率で否認されると言えないこともありません。
最も普通の金額が平均額とすると、真ん中の太字の数値が「平均+標準偏差」、言い換えると、この分布の平均的な散らばりの額、つまり「普通と以上の限界」といえるかもしません。
ただ、繰り返しますが、「あくまで周りと比べると」ということであって、会社への貢献度に対する評価は余り含まれていませんので、この金額が全てではありません。
今回は、業種に関係なく分析していますので、一概にこの金額が適切とはいえません。また、従業員数で会社規模を測るという方法もあります。
必要に応じて、詳しく分析・検討してみていただければと思います。
なお、個人・法人を合わせた税額が最小となる場合の役員報酬についての記事で書きましたが、現在の税法上の税額最小ポイントとなる役員報酬は意外と低いので、役員報酬をとれるだけとって法人税を小さく、という考えないほうが良い場合もあります。
ちなみに、母集団の2,568,653社を調査するのに要求精度5%で信頼率99%の場合の必要サンプル数は661.5社ですから、売上規模50億円未満のランクにおいては十分にサンプル数の条件を満たしているといえます。50億円以上のデータについては信頼率90%では4.6%の要求精度となるので、それなりに信頼できる数値といえます。
最後に、全体のグラフが右下がりになってしまう理由ですが、売上の小さな会社は、役員報酬を大きくすると赤字になってしまうため多くは取れないという制約があるため、役員報酬を取れる余地が限られていますが、売上の大きな会社は役員報酬を小さくも大きくもできます。つまり、売上の小さな会社から大きな会社まで、役員報酬の小さな額については選択の余地があるために、幾重にも重なるために、右下がりのグラフとなってしまうのでしょう。
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