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2006年05月21日

特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入対策

※ごらん頂いている内容は平成19年度税制改正により形骸化しております。ご注意ください(詳しくは下記[関連記事]を参照)。 

「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入シミュレーション」を、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入対策と称して締めくくりたいと思います。

まずはその前に、この「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入シミュレーション」のこれまでをまとめてみたいと思います。

平成18年度税制改正により、実質的な一人会社のオーナーへの役員給与について、給与所得控除相当部分の法人段階での損金算入を制限します。という新たな規定が設けられました。

この規定への対応策として、
(1)オーナー及びその同族関係者等が株式等の90%以上を保有
(2)常務に従事する役員の過半数を占めている同族会社
の2要件を回避すればよいという手法が提案されています。

しかし、政令72条等の法令の解釈次第によっては、上記対策も否認される可能性がありますし、かつ、上記対策は会社運営の安定を考えるのでれば、税理士として提案すべき対策としては疑問があると私は考えました。

そこで、同法適用を満たすことになってしまったと仮定して、その善後策を考えようというのがそもそもの趣旨でした。

そして、
(1)法人税率と個人の所得税率の関係性に着目した節税策としての法人設立を封じるための立法であること
(2)給与所得控除に着目した課税であること
の2点から、「法人税率・所得税率・給与所得控除」の3要素を中心とする、その計算構造中に善後策が生じるはずであると考え、検討を始めました。

しかし、計算構造を分析して計算を進める過程の中で、税額最小となる役員報酬と会社利益の関係が、意外と複雑であったことに気が付きます。そして、そもそも法人税法35条適用前においても、役員報酬の設定次第で、「法人+個人」に対して課される税金等を検討する余地があることが分かりました。

また、税額最小は、
(1)同法適用前の税額最小値
(2)同法的用後の税額最小値
に分解され、(1)-(2)が今回真(しん)に求めるべく検討してきた結果であると分かりました。

と、ここまでが、前回までの記事のまとめです。

そして、今回、当初の目的である「税制改正後の税額最小値をとる会社利益と役員報酬」とともに、「具体的な対策」について検討をしてみるみたいと思います。

 

①税額最小となる会社利益と役員報酬の関係 

はじめに、税額最小値をとる会社利益と役員報酬について検討してみたいと思います。

税額最小となる会社利益と役員報酬を表にまとめました。 

可処分利益役員報酬月額会社利益会社税金①個人税等②税総額①+②
1,000,000100,000-200,0000295,892295,892
5,000,000100,0003,800,0001,180,100295,8921,475,992
10,000,000300,0006,400,0002,045,4001,077,6743,123,074
15,000,000500,0009,000,0003,033,7001,946,1404,979,840
20,000,000800,00010,400,0003,667,5003,347,7807,015,280
25,000,0001,000,00013,000,0004,844,5004,115,2708,959,770
30,000,0001,200,00015,600,0006,021,5005,027,57011,049,070
35,000,0001,800,00013,400,0006,284,1007,968,77014,252,870
40,000,0001,800,00018,400,0008,547,6007,968,77016,516,370
45,000,0001,800,00023,400,00010,811,1007,968,77018,779,870
50,000,0001,800,00028,400,00013,074,6007,968,77021,043,370
55,000,0001,900,00032,200,00014,855,3008,499,50023,354,800
60,000,0002,400,00031,200,00014,505,10011,349,50025,854,600
65,000,0002,800,00031,400,00014,704,30013,629,50028,333,800
70,000,0003,200,00031,600,00014,903,40015,909,50030,812,900
75,000,0003,700,00030,600,00014,586,60018,759,50033,346,100
80,000,0004,100,00030,800,00014,785,80021,039,50035,825,300
85,000,0004,500,00031,000,00014,985,00023,319,50038,304,500
90,000,0005,000,00030,000,00014,668,10026,169,50040,837,600
95,000,0005,400,00030,200,00014,867,30028,449,50043,316,800
100,000,0005,900,00029,200,00014,550,40031,299,50045,849,900
110,000,0006,700,00029,600,00014,948,70035,859,50050,808,200
120,000,0007,600,00028,800,00014,831,00040,989,50055,820,500
130,000,0008,500,00028,000,00014,713,40046,119,50060,832,900
140,000,0009,400,00027,200,00014,595,70051,249,50065,845,200
150,000,00010,200,00027,600,00014,994,00055,809,50070,803,500
160,000,00011,100,00026,800,00014,876,30060,939,50075,815,800
170,000,00012,000,00026,000,00014,758,60066,069,50080,828,100
180,000,00012,100,00034,800,00019,169,20066,639,50085,808,700
190,000,00012,900,00035,200,00019,576,00071,199,50090,775,500
200,000,00013,700,00035,600,00019,982,80075,759,50095,742,300
210,000,00014,500,00036,000,00020,389,70080,319,500100,709,200
220,000,00015,300,00036,400,00020,802,70084,879,500105,682,200
230,000,00016,100,00036,800,00021,219,30089,439,500110,658,800
240,000,00016,900,00037,200,00021,636,00093,999,500115,635,500
250,000,00017,700,00037,600,00022,052,60098,559,500120,612,100
260,000,00018,600,00036,800,00021,896,700103,689,500125,586,200
270,000,00019,400,00037,200,00022,303,600108,249,500130,553,100
280,000,00020,200,00037,600,00022,710,400112,809,500135,519,900
290,000,00021,000,00038,000,00023,117,200117,369,500140,486,700
300,000,00021,800,00038,400,00023,524,000121,929,500145,453,500

上記の表中の、可処分利益1,550万円以下については、同法適用前の税額最小値と同値となっています。(ただし、実際には前3年で求めることとなります。)

1,560万円以上を見た場合の、同法適用前後の税額最小役員報酬と、同法適用に起因する増税額は以下のようになります。

可処分利益改正前最適報酬改正前最小税額改正後最適報酬改正後最小税額増税額節税余地
15,600,0001,000,0005,233,270600,0005,240,6487,378752,722
16,000,0001,000,0005,357,470600,0005,421,74864,278705,422
17,000,0001,000,0005,692,170700,0005,779,78087,610682,190
18,000,0001,000,0006,026,870700,0006,232,480205,610599,590
19,000,0001,000,0006,361,570700,0006,685,180323,610599,590
20,000,0001,000,0006,696,270800,0007,015,280319,010722,190
21,000,0001,100,0007,051,370800,0007,467,980416,610628,190
22,000,0001,200,0007,474,670900,0007,815,710341,040707,360
23,000,0001,200,0007,880,170900,0008,268,410388,240707,360
24,000,0001,300,0008,279,870900,0008,721,110441,240681,460
25,000,0001,400,0008,679,4701,000,0008,959,770280,300869,500
26,000,0001,500,0009,079,1701,000,0009,412,470333,300843,700
27,000,0001,600,0009,502,3701,100,0009,744,070241,700938,900
28,000,0001,700,0009,925,6701,100,00010,196,770271,100913,000
29,000,0001,700,00010,331,1701,200,00010,596,370265,200966,100
30,000,0001,800,00010,730,8701,200,00011,049,070318,200940,300
31,000,0001,900,00011,171,0001,800,00012,442,0701,271,07014,630
32,000,0001,900,00011,623,7001,800,00012,894,7701,271,07014,630
33,000,0001,900,00012,076,4001,800,00013,347,4701,271,07014,630
34,000,0001,900,00012,529,1001,800,00013,800,1701,271,07014,630
35,000,0001,900,00012,981,8001,800,00014,252,8701,271,07014,630
50,000,0001,900,00019,772,3001,800,00021,043,3701,271,07014,630
100,000,0005,800,00043,470,2005,900,00045,849,9002,379,700267,100
200,000,00014,200,00090,968,80013,700,00095,742,3004,773,500214,900
300,000,00022,500,000138,459,90021,800,000145,453,5006,993,600300,900

処分可能利益3,000万円までの増税額が、3,000万円を超えた場合の税額とかなり開きがあることが分かります。

「処分可能利益と税額最小会社利益」と「処分可能利益と税額最小役員報酬」の関係をグラフにあらわすと、次のようになります。

saiteki_houshu.gif

税額最小役員報酬は留保金課税がかかりはじめる可処分利益5,400万円付近を境にほぼ一直線に右上がりのグラフを描きます。適用前後を比べても差ほど違いはみられません。

これに対して、会社利益の違いは注目に値します。改正前が会社利益3,000万円付近で安定するのに対して、改正後のグラフは、3,240万円(処分可能利益5,630万円)をピークに2,580万円(処分可能利益1億6,980万円)まで下降し、一気に3,500万円まで上昇した後は緩やかに増加していきます。

これは、改正前が会社の利益が3,000万円となるように役員報酬を設定すればよかったのに対して、改正後は処分可能利益1億円以下のときは給与所得控除の加算を回避するように役員報酬を改正前よりも下げ、1億円を超えたところで、加算される分を上回るように役員報酬高めに設定し、処分可能利益1億6,980万円を境に、再度加算分を回避するように役員報酬を改正前より低めに設定することにより、税額が最小となることを意味しています。

可処分利益3,500万円の拡大すると、3500graph.gif

このようなグラフになります。適用除外の可処分利益3,000万円以下を超える部分で、急激に役員報酬が増加するのが分かります。

 

②特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入対応策

 

上記の分析結果から、以下の対応策が考えれます。

① 処分可能利益が3,000万円以下の場合には、役員報酬割合を50%以下に抑えることにより増税額を抑えることができる
② 処分可能利益が3,000万円超であっても、役員報酬を下げることによって給与所得控除額そのものを引き下げ、増税額を抑えることができる。

ここから、考えられる対応策は・・・

① 会社の目的を見直し、分社化できるところを分社化し1社あたりの処分可能利益が3,000万円未満にできないかを検討する
② 既存業務との関連や取引先との関係上①が無理な場合には、役員報酬を税額最小値まで引き下げる(上げる)

①に関しては、特に計算するまでもなく、同法をみればすぐに分かることだと思います。しかし、その効果を測定できないことには、実効性が疑われることとなってしまいます。今回、その効果を数値で検証することができたことが、このブログの趣旨とも合致して、第一点目の成果だと思います。

また、3,000万円超の会社でも役員報酬の見直しのより、同法の増税額を緩和することができる余地があるということがはっきりしたということが、第二点目の成果です。特に、処分可能利益が2億円ともなると、②の対策をした場合と、しない場合では税額が102万4,600円も差が生じるということは特筆すべき結果だと思います。

ただし、適用除外要件が過去3年の平均であることから、上記対策は計画性を持って行うことが必要です。

今回、大変時間が掛かってしまいましたが、発泡酒を考えたビールメーカーの気持ちが良く分かりました。

なお、今後もより深い検討を進めていきたいと思いますので、参考意見がございましたら、コメント頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

 

なお、税額最小値を求める際の前提条件は以下の通りです。

 

前提条件 
・法人税計算上の課税所得は計算を簡略化しています 
・留保金課税の適用ありとしています
・留保金課税の留保所得額及び留保控除額は計算をもっともシンプルな形に簡略化しています
・留保金課税の留保控除額から自己資本比率を除いています
 
・事業税は軽減税率適用法人を前提としています 
・住民税率は標準税率を適用しています 
・住民税均等割は計算の考慮に入れていません
・個人税の中には「社会保険料」が入っています 
・事業税の外形標準課税適用法人を対象としていません 
・社会保険加入法人を対象としています 
・所得税の計算においては、給与所得控除・基礎控除・社会保険料控除以外の控除は考慮しません
・社会保険料は介護保険ありとしています
・各計算の簡略化のため、端数処理が実際の計算とはことがあります
・事業税の減税効果は法人税の計算上考慮していません
・所得税の税率はH18.1.1現在のものを使用しています
・定率減税は計算の対象外としています

 

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投稿者 松波 竜太 on 2006年05月21日 20:59

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この記事へのコメント

コメント:
税理士の吉澤と申します。

当事務所のブログにコメントを頂きまして、
誠にありがとうございます。

すばらしい分析ですね。
私の場合、solverで最適値を計算してしまうので、
このような分析をしたことはありませんでした。

ただ、私のシミュレーションの泣き所は、
「法人の利益が事前にわかっている」ことと、
「法人の課税期間が個人の課税期間と同じでないと
いけない」ので、あくまでも目安に過ぎないという
ことですね。

大変参考になりました。

今後ともよろしくお願い致します。

投稿者: Yoshizawa Accounting Office | 2006年05月22日 10:37

>吉沢先生

コメントありがとうございます。先生にご覧頂けて感激です。

私のシュミレーションはオーソドックスな線を狙いすぎて、前提条件が膨大で、これを理解するのにも骨が折れてしまうという泣き所があります。(専門家以外の方がご覧になったら、イライラして最後まで読んでくれないのでは無いでしょうか。)

今後ともよろしくお願いいたします。

投稿者: 松波 | 2006年05月22日 10:46

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