理にかなった生命保険(法人編1・借入金返済編)
法人で生命保険に入る最も合理的な理由は、社長が亡くなった場合の「債務の解消」です。
例を挙げると、
(ア)従業員や役員の死亡退職金(年金)の支払
(イ)借入金の返済
(ウ)仕入や経費の代金支払
(エ)事業継続が困難になった場合の損害賠償金の支払
と、いったところでしょうか。
今回は(イ)借入金の返済の保障について考えてみたいと思います。
[1] 後継者の有無による判断
これらの債務についての保険を考える前に、大前提を考えなくてはなりません。
社長にもしものことがあった場合に、
(X)事業を存続するか
(Y)会社を清算するか
のどちらを決断するかによって、対応策が全く異なるからです。
基本的には後継者が既に育っていれば(X)を、後継者がいなければ(Y)を選択せざるを得ないと思います。
[2] 後継者がいる場合
まずは、後継者がいる場合を考えてみたいと思います。
後継者がいる場合には、事業継続が可能ですから、今ある債務を全て清算するという必要はありません。
しかし、次の2つの備えが必要です。
社長交代のショックから立ち直るだけの資金
相続が不調に終わった場合の担保力の低下
社長交代のショックとは、社長だからこそ取引をしていた取引先が減ったり、後継者の未熟さから不利な取引条件を飲まされたり、資金調達にまごついたりということを差します。
しかし、月商の1か月分程度の保障があれば大抵は乗り切っていけるのではないかと思います。
これで乗り切れない場合には、経営者が未熟すぎることも考えられますので、やはり、(Y)会社を清算する道の選択も考えたほうが良いかもしれません。
また、相続によって社長が持っていた個人財産が分散される可能性があります。たとえ、個人所有の財産が借入れの担保になっていなかったとしても、銀行はその資産を想定して個人の保障能力を測っていますので、個人財産が散逸することは経営にとって、少なくないダメージを与えます。
これを防ぐには遺言によって、事業後継者以外には生前贈与をした上で、相続を放棄させる等の対策をして、なるべく事業後継者に財産が集中できるように事前に対策をしておくことが必要です。
これが、不可能であると考えられる場合には、担保能力が最悪「1/法定相続人の数」まで低下すること、を想定しなければなりません。
この場合には、後で述べる(B)弁済期にまとめて一括で弁済する借入金については、折返しの融資が受けられない可能性がありますから、
借入金×(法定相続人-1)÷(法定相続人の数)÷(1-税率)
(例: 借入900万円、法定相続人3人の場合 900万円×2÷3÷0.6=1,000万円)
だけ、返済できるように個人編でも紹介した「長期平準定期保険」または無審査で自動更新ができる「箱型定期保険」などでカバーしておく必要があります。
[3] 後継者がいない場合
次に(Y)の会社を清算する場合を中心に必要な保障を考えてみたいと思います。
その前に、ハッキリしておかなければならないことがあります。
「会社を清算するのだから借金もチャラになるんじゃないの?」という考えは成り立ちません。同族会社の借入金は全て社長個人が連帯保証人になっているからです。つまり、会社で負わなければ、個人に回ってきてしまうということになります。
事業を清算するときに頼りになる資産は。
(イ)現金預金
(ロ)売掛債権
(ハ)上場有価証券
(ニ)差入保証金
(ホ)土地
といったものでしょうか。
建物・構築物・機械・車両・器具備品・棚卸資産
は、本人の使用価値のほうが大きいので、現金化はあまり当てにしないほうが無難です。
また、(ロ)売掛金の中に不良債権化しているものが含まれていないかチェックをしておくことが大切です。
さらに、(イ)⇒(ホ)としたに行くほど、現金化しにくい資産となります。特に、土地などは売り急ぐと足元を見られて買い叩かれる恐れがありますので、相続が起こってから慌てて売らなければならないような事態はなるべく避けたいものです。
[3-1-1] 徐々に返済していく借入金に対する備え
まずは(2)借入金の返済について考えてみたいと思います。
借入金の保障は借入金の性質毎に備えるのが基本です。借入れの金の性質とは
(A)徐々に返済が進んで残高が減少する借入金
(B)弁済期にまとめて一括で弁済する借入金
の2つです。
(A)のタイプは3~20年(多くが5年)の長期にわたる返済をする仕組みで、(B)のタイプは0.5~1年後に弁済期限が来るものがほとんどです。
ただし、(B)の保険は弁済期限に同額の折返しの融資を受けることが前提になっている場合が多いと思います。つまり、銀行から断られない限り永続的に続く融資であることも多いと思います。
まずは、上記の (ハ)上場有価証券~(ホ)土地 と紐付き関係になっている借入金がないか調べて、関連のあるものを現金化して内入返済をするということを考えます。その上での残額について考えていくことにします。
考え方は簡単で、それぞれの満期と残高に合わせて保険を組めばよいのです。
(A)の徐々に残高が減る借入金については、個人編でも紹介した「収入保障保険」を組み合わせるのが一番です。実際に金融機関でも収入保険とセットで融資をする場合があります。
5年弁済の借入金でしたら、借入れをするときにセットで5年満期の収入保険毎月の返済額に合わせた保障額を得られる保険金に入ってしまうことをお勧めします。
ただし、税引後の金額で「元本+利息」を返済しなければなりません。したがって、
年の必要保障額=年間元本返済額÷(1-税率)+年間利息
となるので、ご注意下さい。
もう一つ(A)に似たタイプの債務があることを忘れてはいけません。
「リース」です。リースも解約時に全額残金をペナルティーとして一括支払する必要があります。
事務所や工場などを借りて経営をしている場合には、その返還と同時にリースも解約する必要があると思いますので、やはり収入保障保険をセットで加入しておくと良いでしょう。
この場合のポイントは、収入保険でも全額を一時受取できるタイプの保険を選んでおく必要があるという点です。
また、リースは支払額がそのまま経費となるので、
必要保障額=リースの残額
となります(税率で割戻す必要はありません)。
[3-1-2] 弁済期に一括弁済する借入金に対する備え
つぎに、(B)弁済期にまとめて一括で弁済する借入金を見ていきたいと思います。
は返済期日が到来次第、全額を一度に返済しなければなりません。
しかし、このタイプの借入れは、弁済期限に同額の折返しの融資を受けることが前提になっている場合が多いので、この分の返済原資が現金で会社に残っていることは少ないと思います。
ですから基本的には、
借入金÷(1-税率)
を生命保険でカバーしておくのが基本です。
特に、永続的に運転資金として組み込まれてしまっており、現金を用意することが難しそうな場合には、この部分の金額は「長期平準定期保険」または無審査で自動更新ができる「箱型定期保険」にてカバーしておくことが望ましいと思います。
通常「長期平準定期保険」は解約返戻金を中心に考えるので、あえて高めの保険料を設定することが多いのですが、借入れ返済の原資の場合には、保険料は出来るだけ安く抑えたいので、コストパフォーマンス重視で選ぶべきです。
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