金融機関/税務署から決算書の評価を上げるポイント25 その5
[税理士法第33条の2第1項に規定する添付書面]
申告書に添付する注記表のようなものです。
添付は任意ですが、「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリストとは異なり、税理士法33条の2第1項に規定された課税当局向けの法定書類です。
・何を見たのか
・どんな点に注意してチェックをしたか
・大きな増減があった場合のその理由
が書かれています。
チェック項目㉓ 税理士法第33条の2第1項に規定する添付書面は添付されていますか
この書面が決算書(申告書)に添付されている割合は、平成19年度のデータで、わずか5.7%に過ぎません。
税理士のお客様への関与の仕方には、申告書に署名をするだけという関与の仕方から、元資料まで確認し、お客様の処理を理解・検討した上で申告書を作成するという関与の仕方まで、様々な形態があります。
課税当局は、この書面が付いていないと、税理士が決算内容をどの程度理解した上で作成した申告書なのかを知るすべがありません。
要するに、この書面の添付のない申告書は、前提条件不明と同じことになります。
だから、たとえ税理士が作成した申告書に対しても、実地の調査が必要になるのです。
この書面が添付されている場合には、課税当局は、お客様に実地調査を行う前に、まず、税理士に、この書面に関して意見を聞かなければならないことになっています。
税理士から意見を聞いて、疑問点が晴れれば、お客様への調査は無しとなります。
(ただし、当局としては、税理士を100パーセント信じるわけにはいかないこと、また、当局としての指導という意味もあるので、税理士からの意見聴取だけで終えようとは、基本的には考えていないようです。 )
しかし、わざわざ税理士から意見を聞いた上でないと調査の出来ない5.7%の申告書と、すぐに実地調査に望めるほかの94.3%の申告書を比べた場合、みなさんが調査官だったとして、調査の件数をある程度こなさなければならない立場だったら、どちらを優先して選定するでしょうか?
現実の話として、法人税の実調率は平成18年度は4.9%ほどで、これを上げることが課税当局の至上命題となっています。
現場では、処理件数に対するプレッシャーが相当強いようです。
そのような訳で、この書面がついている申告書かどうかで、税務調査の頻度に差が生じる可能性が非常に高いといえます。
チェック項目㉔ 税理士がチェックした勘定科目等が記載されていますか
この書面が添付されていたとしても、内容が薄い場合には、付いていないものと同じ取り扱いをするという運用がされています。
したがって、ただこの書面を付ければよいというものではなく、内容もしっかりとしたものでなくてはなりません。
「3.計算し、整理した主な事項」欄には、勘定科目ごとに、どのような資料をどのように確認をしたのかが記載されます。
食品におけるトレーサビリティに例えていうならば、
| 決算書(申告書) | 食品 |
|---|---|
| 決算書 | 成分表示 |
| 「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリスト | 検査項目表示 |
| 税理士法第33条の2第1項に規定する添付書面 | 検査方法表示 |
と、いったところになります。
これらが全て有機的に機能して、初めて信頼度の高い決算書(申告書)になります。
従って、「税理士法第33条の2第1項に規定する添付書面」は税務署のみならず、金融機関に対しても、検査方法を明らかにするための資料として、重要な役割を負っています。
なお、この書面に記載された内容について、税理士見解と課税当局の見解が異なり、税額が増えたとしても、その項目については、過少申告加算税が課されません。
そのような理由から、この書面に虚偽の記載があった場合には、課税当局は、税理士に対して懲戒処分を行うことができます。
書面が添付されている割合が、5.7%しかないのは、この懲戒処分が相当意識されてのことと考えられています。
それゆえに、この書面の添付の有無と、その内容を検討することで、会計事務所の責任感と力量と共に、課税当局・金融機関への情報開示度を量ることができます。
なお、弊社では、全てのお客様に「税理士法第33条の2第1項に規定する添付書面」を添付しています。⇒こちらをご参照下さい
[法人事業概況説明書]
法人の事業の概況(事業内容・社員数・決算書の要旨等)が記載された書類です。
平成20年に添付が法令で定められた法定書類になります。
チェック項目㉕ 月別の売上(収入)金額に対する仕入金額・外注費に不自然さはありませんか
決算書に記載された売上高や経費は1年間の合計です。
従って、法人事業概況書が、決算書(申告書)において、月次の推移を示す唯一の資料になります。
売上高
仕入
外注費
人件費
の4つの推移を記載します。
これらは損益計算書においても重要項目ですので、これらの月次推移を正確に示すことは大切です。
また、売上高と仕入・外注費には相関関係があるのが通常ですので、これらが連動して動いているかを確認しておく必要があります。
特に、最終月付近で、
売上高だけが増えて、仕入・外注費が増えていない場合には、粉飾して利益を量増ししているのではないか
逆に、売上高は自然な推移なのに、仕入・外注費だけが増えている場合には、脱税しているのではないか
と、疑念をもたれる可能性があります。
月次の推移が会社での認識と合っているか、確認しておいて下さい。
ポイント25についての説明は以上です。
最後に一言だけ付け加えさせて頂きます。
これらのチェックポイントが全てクリアになっていたとしても、直ぐに金融機関からの融資が受けられるわけではありません。
少なくとも、2-3年はこれらを満たした決算書(申告書)を作成し、かつ、説明力の高い試算表(月次報告書)を金融機関へ提供することで、一歩一歩ずつ信頼を高めていく必要があります。
説明力の高い試算表(月次報告書)については、次回の記事にて説明したいと思います。金融機関からの融資に対する特効薬はありません。
今、苦しいと感じている企業様は、徐々にでも信頼を高めていく努力を、今すぐに始めてください!
そして、決算書に必要なことが、また、適切な形で表現されていないようであれば、会計事務所に積極的にお願いして下さい。
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