金融機関/税務署から決算書の評価を上げるポイント25 その3
[決算書]
この50ページからなる書類の中心となる部分です。
決算書の内容は以下の通りです。
・貸借対照表 (資産・負債・資本の期末の残高)・損益計算書 (1年間の収益・費用)
・販売費及び一般管理費内訳書 (損益計算書における販売費及び一般管理費の明細)
・製造原価報告書 (損益計算書における製造原価の明細)
・株主資本等変動計算書 (1年間の資本の部の変動)
・キャッシュ・フロー計算書 (1年間の現金収支)
・注記表 (決算書作成の前提条件・数字以外の重要事項)
狭い意味での、決算書はこの部分だけを示します。
ただ、前述したように、金融機関から決算書を求められた場合には、ためらわずに、50ページからなる冊子全体のコピーを提出してください。
大手企業と取引を行う場合に、決算書の提出を求められる場合があります。この場合には、この部分だけを抜き出して提出して頂ければ問題ありません(販売費及び一般管理費内訳書・製造原価報告書を除いて提出も可)。一般的にそうされています。金融機関と同じように冊子全部をお渡しするのは危険だといえましょう。
チェック項目⑤ 株主・役員等からの借入がある場合に、金融機関からの借入とは別建表示されていますか
チェック子項目④は、例えば、6,000万円5年弁済の借入が期末にあったとして、1,000万円分は、翌期には返済しなくてはならないとした場合に、その1,000万円を「流動資産の部」に6,000万円とは分けて記載しているかということです。
「重要性の原則」(金額的に重要でない場合にはこの処理は省略可)に従って分けていない。または、同じ負債であれば、流動負債の部よりも固定負債の部に計上されたほうが、財務分析をすると有利になるので、わざわざ分けない。
ということが多いのですが、会計基準を遵守するのであれば、分けるべきですし、この金額を計算しておくと、便利なことが一つあるのです。
それは、
(1) 営業キャッシュ・フロー>短期借入金+1年内返済予定長期借入金の場合
営業キャッシュ・フローで借入の返済を全額まかなえるので、金融機関に返済力をアピールできる
(2) 営業キャッシュ・フロー>短期借入金+1年内返済予定長期借入金の場合
来期「折り返し」融資を受けなければならない金額 = 短期借入金+1年内返済予定長期借入金-営業キャッシュ・フローが、一目瞭然となるというものです。
透明性が高まる上に、金融機関にアピールまたは交渉すべきことが明確になるので、私はこれを計算して、敢えて分けて記載することに、非常に意味があると考えています。
チェック項目⑤は、金融監督庁の検査官が金融機関を検査する際の手引書である「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」により、「代表者からの借入金については、これを自己資本相当と考えることは可能」と明らかにされていることから、他の借入とは切り離して、独立表示をすることが望ましいといえます。
後述する勘定科目内訳明細書にも借入金の内訳に相手先が記載されますので、独立表示しなくとも、金融機関がよく見てくれれば問題ないのですが、独立表示をさせておくことで、アピールしておいて損はないと思います。
チェック項目⑥ キャッシュ・フロー計算書が添付されていますか
チェック項目⑦ 営業キャッシュ・フローが「貸借対照表の短期借入金+1年以内返済予定長期借入金」の額を上回っていますか
キャッシュ・フロー計算書は、会社法で定められた計算書類ではありません。しかし、有価証券報告書には添付が義務付けられています。
言い換えると、大手企業には義務だが、中小企業においては免除されている書類です。
しかし、最近の金融機関は、「キャッシュ獲得能力」を非常に重要視しています。
2期分の決算書を並べれば、不正確ではありますが、金融機関でもキャッシュ・フロー計算書を作成することが可能です。
しかし、これは逆に、キャッシュ・フロー計算書を付けていないと、当社にとって不利なキャッシュ・フロー計算書を金融機関が適当に作って、それに基づいて評価されてしまう可能性があるということでもあります。
また、金融機関がキャッシュ・フロー計算書を作成して検討してくれていれば、まだ良いのですが、最悪の場合、「借入金対月商倍率」や「必要運転資金額」等だけをもとに、返済能力を計られてしまう可能性もあります。
こうなると、設備型産業や、利益率は高いが売上高の小さな産業は非常に不利な審査を受けることになります。
正確なキャッシュ・フロー計算書を作成して、有利に評価してもらえる要素があるのであれば、そこを積極的にアピールすべきです。
また、キャッシュ・フロー計算書を添付することで、金融機関によりオープンで、キャッシュ・フローを重視した経営を行っているという印象をもってもらうことが可能になります。
チェック項目⑦は先述の通りで、営業キャッシュ・フローと「貸借対照表の短期借入金+1年以内返済予定長期借入金」との関係を、情報として提供することは非常に重要です。
金融機関から、融資を受けなければならない会社は、決算書が赤字になることを非常に嫌う傾向があります。
私もその気持ちは良く分かりますが、例え当期純利益が赤字でも、営業キャッシュ・フローがしっかり確保できていて、「中小企業の会計に関する指針」に従った上の赤字であれば、金融機関はきちんと評価をしてくれます。
会計ソフトから簡単に作成できますので、ぜひ添付されることをお勧めいたします。
チェック項目⑧ 注記表は添付されていますか
チェック項目⑨ 中小企業の会計に関する指針に従っていますか
チェック項目⑩ 消費税課税事業者は税抜方式が採用されていますか
注記表は、決算書作成の前提条件リストと数字に表れてこない部分の補足資料を合わせたものになります。
会社法施行前から、商法上、前提条件(重要な会計方針)等を決算書に注記として記載する必要があったのですが、中小企業の決算書にこれが記載されていることはほとんどありませんでした。
税務上の必要性がなかったというのも大きな理由だと思います。
しかし、平成18年の会社法施行により、大・中・小会社が注記すべき事項が明確化され、小企業の負担が減ったこと、また、会計ソフトが、「注記表」に対応したことにより、記載が容易になったために、これを添付している決算書を多く見かけるようになりました。
付いていたからといって、決算書が良く見えるわけではありませんが、他の決算書に付いている書類が、御社だけ付いていないというのは、問題があります。
去年の決算書と同じだから安心と考えていると危険かもしれません。
チェック項目⑨は、「中小企業の会計に関する指針」に関してです。
「中小企業の会計に関する指針」は、大企業のような精緻な会計処理を行うことが、中小企業にはコスト的に厳しいことから作られた、「最低限度この程度の精度で決算書を作りましょう」という、会計のマナーのようなものです。
マナーを守らなくても食事はできますが、守らないと恥ずかしい思いをします。
それと同じことです。
税制と同じで、会計基準もめまぐるしく変わります。
正直申しまして、お客様自身がこれを全て抑えているならば、会計事務所に頼む必要はないと思います。
乱暴な意見を申しますと、この部分は会計事務所にお任せしてしまうしかないと思います。
「中小企業の会計に関する指針」を適用している場合には、注記表にその旨を明らかにしましょうということに、なっています。
ただし、注記表さえ付いていない場合には、間違いなく、この指針には従っていません。
会計事務所がルールに基づいた決算書を作ってくれているのか、ここにこの一文があるかどうかで分かります。
逆に言うと、「会計事務所にお願いしているから、法令に基づいた決算書が作成されている」と、妄信してはいけないということです。
チェック項目⑩は、細かい話なのですが、決算書が常識に基づいて作成されているかどうかの問題だと私は考えています。
決算書作成の際に、実は消費税について、税込処理にするか税抜処理にするかは、会社の任意なのですが、消費税は預り金なので、「税抜処理」の方が理論的と考えられています。データはありませんが、上場企業の大半が税抜処理によって計算されています。
これに対して、税込処理は、計算が簡単なのですが、恣意的に利益を操作しうる余地があるので、信頼性が低下します。
しかし、税抜処理か税込処理かを決算書だけで判別することが難しい場合がありますので、税抜処理を採用している場合には、こちらにその旨を注記しておくことが大切だと思います。
金融機関/税務署から決算書の評価を上げるポイント25 その4 に続く
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